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コトノハヤ徒然

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03.26 Sat

SS的な。

SSSのつもりで書いていたら微妙な長さになりました。
アリアンロッド固定その2の文。
とある印象的なイベント後の独り言。
元の文に少し足したり減らしたり。



伸ばしかけた手をかろうじて止める。
握り締める。掌に爪痕がつく程、きつく。

触れるべきでないのがわかっていた。
傍らの兎を押し出してやり、絶句したまま成り行きを見守る輪を、
少し離れて見つめていた。

目の前で展開される記憶の劇場は、重々しい悲劇を映し続ける。
皆表情は硬く、考えの行く先は違っても同じことを考えているように思えた。
眼鏡の硝子越しに、ただ、それを眺めていた。


心の底が、不快なささくれを作っている。

 
――その輪に近づいて。
その仲間たちの輪に近づいて、触れて、一体どうしようというのか。

図々しく、仲間面をして、痛みを共有しようとでもいうのか。
嘘だらけの己の身の上を、棚にあげて?

舌打ちをなんとかこらえる。
一瞬でも近づこうとしていた自分が、心底忌々しかった。
記憶を映すというあの白紙の本以上に。
目の前に広がるこの光景以上に。

 
本から解放され、現実に戻ってみれば、
それぞれが、何かしらの感情を抱いたらしき仲間たちと、
一人取り残され、話をそらされ、憤然とする青年ひとり。
不機嫌そうな困惑を露にする青年へ、笑みを作ってみせる。
事実のいくつかを告げず、いくつかを告げる。
そんな慣れた作業を、平然と繰り返す自分には反吐がでそうだが。
 
心のどこかが疼く。
その何かを、放っておくことはできない。
それはしっかりと『無視する』。
そうしておかなければならない。

――心を平らかに。
痛むことなく、たとえ酷く痛んだとして、無視すれば動けるのだ。
忌々しさ、郷愁、仲間、過去、未来。
考えても、心痛めてもどうしようもないことだから。
触れてみたとして、何一つ、望むとおりにはならないのだから。


『無視、できた』。

いつもどおりに。
その後、浮かない顔の面々に茶々を入れて。
これもいつもどおりに。
茶化しすぎたら相応に蹴られたりもしたが、それも予定内で。

――独りに戻って、考える。
「さあ、俺はいつまで、ここにいられるのかな」。
平和な平和なその場所は、陽だまりのような。ぬるま湯のような。

独り。
蒼ざめ、冷え冷えとした月の光が降り注ぐ机の前で、じっと暗闇を見つめる。
膝の上で丸くなった使い魔からは、当然返事はなかった。

                      ―――隔意(ストラトス)