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コトノハヤ徒然

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04.07 Sat

SSSの掃き溜め。

短文を、色々だらだらかいてました。
おもに、TRPGのキャラクタの話で、風景描写です。
世界の雰囲気をつかんでRPの肥やしにしたいな、という気持も込めてかいてます。
そんな本文は、追記に。
【大海を見下ろす眺望】

この街の風は塩が強い。

浜辺に生える樹木草花には、塩の気に強いものが多いが、
内地の森育ちの「彼」の葉はそうではなく、

「あ。」

つまみあげた葉先が、わずかに茶色い。
言うなれば、枝毛である。
一日中、街中を見渡せるような、開けた――つまり風辺りのいい場所で、
日向ぼっこなどしていると、翌日はこのようなものである。

この街にきて少しだけ時も経ったが、
彼はこの潮風の香る海を見下ろす眺めが、相変わらず好きで、時間があれば飽きることなく見ている。

刻一刻と形を変える街並み、人の流れから学べるものは、尽きることがない。
ただ、まあ今日は、

「たまには労ってあげないとね」

不機嫌そうな葉の端っこを苦笑して弄びながら、彼は屋根から降りていくのだった。
――そんな海の街の一幕、幕間。



【驟雨】

それは、いつも突然やってくる。
見る間に空に育って行く黒い枝葉のような雲。
ともなうのは、強い風。
徐々に、その後は急速に濡れて行く大地、――湿った土の匂いが、広がる。

海がもたらす暑く湿った空気は、
空のバケツをひっくり返したような大量の雨水となっては、しばしばこの街に降り注ぐのである。
街が雨の色に塗りつぶされて行く。

「あー。ああ。」

滝のように雨水が下る屋根、上がるのは間の抜けた声。
雨に打たれた緑が鮮やかに輝いている。
同じ緑の瞳が、呆れと諦念を半分ずつ含んで、まばたいた。

――つまるところ、彼はこのスコールから逃げそびれたわけである。
屋根の上で頻繁に日向ぼっこを楽しむ彼は、よく「逃げ遅れる」。
この街に来てから濡れ鼠になった数はといえば両の指で数え足りないのである。

…今日は、少し違った。

「どうりで、」素直に感心の色を含んだ声音である。

「道理で猫が慌てて逃げてくわけだ」

呟き、軒下に目をやる。
軒下の白い猫は、大きなあくびをひとつ。
毛の一筋も濡れてはいない。

「次は僕も猫に倣おう、」
我らが知の神様、動物とは実に賢いものです。

「僕にもヒゲでもあればいいなあ。」もう少し利口になれるかもしれない。

――雨はまだしばらくやみそうにない。雨の海の街、冒険の幕間。



【潮騒の淵にて】

薄い木の板を、そおっと踏む。
――ぎぃ、ぎぎぃ。
木が軋む音がした。

板に軽くのせたその足元は、少しも静止していることがない。
常に、規則的なような、不規則なような、縦と横がない交ぜになった微かな揺れの中にある。

それゆえに、一枚板の上に立っているというのに、
何処か宙を漂っているような、座りが悪いような、奇妙な感覚を覚える。

――つまり此処は船上の一室なのである。
文字通り、今は「地に足がついていない」のであった。

この感覚は、彼が街に来てからそう珍しくもなく遭遇しているものだ。
街には、船上に住む者も少なく、港には新旧問わず、溢れるほどの船舶住居がある。
また時には仕事絡みで長時間船の上で生活することだってある。
非常に、馴染み深い感覚といえるものなのだ。

しかし彼は慣れることなく、この感覚を珍しがっている。
元々彼が、地に足をつけて暮らす生き物であることにも、あるいは由来するのかもしれない。
――そして、遠くない未来に、何処かの森に根を下ろすことが決まっているからかも、しれない。

ぎし、と見えない水面が船を揺らす。

揺れの種類が、先ほどまでとは異なっているのを、彼は知覚していた。
粗末な板張りの隙間から、強く香る磯の匂い。

じきに、嵐がやってくるだろう。