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コトノハヤ徒然

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07.16 Mon

続SSSの掃き溜め。

キャラクタが遠出する機会があったので、また書き散らしたやつを残しとく試みです。
ルルのです。
ビリリリ。

と、いい音もとい嫌な音がした。
恐る恐る、視線を手元に落としてみる。
ほころびから見事に、無残に、縦に避けた服の残骸が目に映った。

宿で借りた洗い桶の中の一張羅。
仕事で真っ黒な墨染になってしまったことが先ほどまで一番の案件だった。
今からは、激しい損傷(自分でやってしまったわけだ)が、問題である。

張られた水の中に手をつっこみながら、呆然とする。
裁縫などという精密作業は、彼の不器用な手にはあまる仕事だった。
せいぜい修復不可能なぼろ布を作り上げるのが関の山である。

だが明日から船旅にこの服なしはつらい――。


かくして――。

「散財ってこういうことを、言うのかな」

小首を傾げつつ、少なくなった布袋の中の硬貨を数えてみる。
急ぎ仕事を頼んだツケは、やはり大きかった、わけである。

「むむん」

少しだけ途方にくれつつ、腕を通した服は、新品のようにきれいに繕われていた。

古都を、一度振り返る。
あの街の中には、こんな仕事のできる腕利きの仕立て屋がいくつもあるのだ。
歴史の深い街並みは、彼が身を寄せる街とはまた風情が違う。
まだまだ、縁があるかもしれない。

強い潮の香りを、あたたかな風が運ぶ。
軽やかな一陣に、潮風と蛸墨ですっかり傷みきってしまった髪が揺れた。

そんな古都の風景。